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    私はもともとヌル湯好きで、いつまでつかっても汗のでない程度が好きだ。

    「うむ、わしか」

    「へえ、――どうもごていねいなことで――」

    道平はまるで大きな輪がゆつくり廻つていて、その一点の結び目が眼の前に現はれたときにやつと口を開くかのやうであつた。

    何となく、彼はさう云ひたげであつた。実際それは咽喉まで出かゝつていた。若し彼が理窟といふものを知つていたら、日常の些細ささいな事柄からでも尤もらしく意見をすぐに云ひ立てるあの「町の衆」のやうな頭があつたら、彼は勢ひこんで口にしたであらう。だが、彼はさういふ小むつかしいことは面倒臭かつたし、又下手だつた。彼はたゞ感じた。そして暖昧な身振りをしただけだつた。

    盛子は妊娠していた。

    「さう、知つてる、知つてる」

    「あのね、何ですよ――」

    今その文太郎が県会の視察旅行に出ていたので、法事の主人役は直造に廻つたのである。だが、文太郎はかういふ町内づき合をあまり好んでいなかつたから、たとへ在宅だつたにしても、直造は主人役を買つて出たであらう。

    房一は急いで膿盆をひきよせた。

    その頃、紙衣かみこの神主達の行列は町からかなりはなれた河向ふの路をぞろぞろ歩いていた。

    「チブスじゃないです。医者は何とか言っていたですが、まあ看病疲れですな。」

    だが、その間にも土手の押問答はつゞけられた。

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